お茶の間シネマトーク「モリコーネ 〜 映画が恋した音楽家〜」

むかし、よく通っていたカフェに「モリコーネ」というお店がありました。
壁いっぱいに描かれたエンニオ・モリコーネさんの大きなお顔。
店内に流れるのは、もちろんモリコーネ作品。
コーヒーを片手に、ふと映画のワンシーンが胸をかすめて、キュンとしたり、ほろりとしたり……。

「モリコーネって誰?」という方も、
『ニュー・シネマ・パラダイス』の音楽と聞けば、
きっと「ああ〜〜!」と心のどこかが震えるはず。
トト少年の無邪気な笑顔。
そして、成長したトトが故郷に戻るあの胸が熱くなるラストシーン。
あの旋律は、心の奥深くにそっと触れ、忘れていた愛や優しさを思い出させてくれるようでした。
私もこの映画で、一気にモリコーネファンに。
そこから気づけば、
「あれ、この映画も?」「これもモリコーネ!?」
……気がつくと、彼の音楽は私の心のBGMになっていました。
西部劇から宇宙まで語る音楽家
初期には西部劇を多く手がけていた彼。
その音楽は、ストーリーよりも先に“心の動き”を語りはじめます。
吹き抜ける風、乾いた砂、沈黙にみなぎる緊張感。
「音で、ここまで物語れるのか」と驚かされました。

私が特に好きなのは、映画『ミッション』の「ガブリエルのオーボエ」。
聴くだけで心がスーッと高い次元へ吸い上げられるような、透明で崇高な響き。
まるで天からひとすじの光が差しこんで、魂の軸を整えてくれるような感覚があります。
ところが驚くことに、
彼は『ニュー・シネマ・パラダイス』も『ミッション』も、最初はオファーを断ったそう。
「映画音楽なんて屈辱だ。いつ辞めようか」と思っていたそうな。
……でも結局、自分から連絡をとり、あんな名作を生み出してしまう。
心さえ決まれば無敵です。
このツンデレっぷりが、愛おしいです(笑)。
音で心理を描くという才能
モリコーネの音楽は、ただの映画のBGMではありません。
心の奥深くの“影”も“光”も語るナレーションのような存在です。
チャルメラの音、鐘の響き、何かを倒す音。
「そんな音使うの?」と思うような音でさえ、登場人物の心の揺れを鮮やかに描きだしてしまうのです。
俳優さんの演技とモリコーネの音楽が重なり、
観るものを、その場面にすっかり引きこんでしまう瞬間。
まさに“映画が恋した音楽家”という言葉がぴったりです。
トルナトーレが映した、素顔のモリコーネ
今回観たドキュメンタリーの監督は、
『ニュー・シネマ・パラダイス』のトルナトーレ。

気心知れた監督だからこそ、
作品に向き合うモリコーネの“少年のような純粋さ”がそのまま映し出されています。
生涯現役。
でも、瞳は深く澄みきっていて、どこか少年のように好奇心いっぱい。
彼の音楽があれほど自由で豊かなのも、なるほど…と納得です。
観終わったあと、
「もう一度、モリコーネ作品を観返してみよう」
そんな気持ちが自然と湧きました。
心を震わせるものにふれたとき、人生は静かに豊かになりますね。
(→予告をみる)
今日の小さな実践アイデア
ちょっと疲れた日は、
「心の映画館」をひらくつもりで、お気に入りの映画のサントラを一曲だけ。
たった一曲でも、いつもの景色が少し違って見えるはず。
あなたなら、どの作品を選びますか?
ジブリもいいな〜♪
今日のひとことメッセージ
心が震える瞬間は、あなたの中にある“静かな光”を思い出させてくれます。
忙しい日こそ、小さな感動をひとつ、どうぞ。






