お茶の間シネマトーク「ワンダフルライフ」

「人生で、いちばん印象に残っている場面とはどんな場面でしょうか?」
「大切な思い出をひとつだけ選ぶとしたら、どんな思い出ですか?」
「もう一度戻りたいと思う場面は?」

こんな質問をされたら、すぐに答えられますか? すぐにでなくても、三日以内に選ぶことができますか?

私はこんなふうに感じました。

「そりゃ、嬉しい瞬間、感激した瞬間、最高と思った瞬間はあったけれど、ひとつだけというのはムリだわ。どれが最高かなんて決められないし」・・・と。

これは是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」という作品のなかに出てくる質問です。

古びた建物、それは戦前のお役所か病院のような飾り気のない建物で、そこに年老いた人が一人また一人と姿を現します。なかには、少数の若者も混じっているのです。

彼らは一室に集められ、さきほどと同じ質問に答えるように求められます。三日間のうちに。

じつは、彼らはいましがた亡くなったばかりの方々で、あの世へと向かうまえにここで思い出選びをしなければならないのです。そして、この先進む方向を決めるのです。

それぞれが選んだ場面のなかで感じていた気持ちこそが、あの世にもってゆくことができる気持ち、永遠につづいてゆく気持ちなのです。(→予告をみる)

是枝監督が、こんなファンタジックな作品を撮られていたとは知りませんでした。

ご覧になる方はみな、「自分だったら、いったいどの場面を選ぶのだろう?」と自分にあてはめて考えてみることでしょう。

おじいちゃん、おばあちゃんたちが過去を回想するシーン。遠い昔の思い出をたどりながら、とつとつと言葉を紡ぐ様子があまりにもリアルで、それぞれが自分自身の経験した過去を語っているように感じられました。さすが、ドキュメンタリー出身の監督さんです。

思い出選びをする様子を見ているうちに、私もだんだん自分の思い出選びの焦点が定まってきました。もし私が語るとしたら、きっと「何気ない日常」であり、ドキドキやワクワクや特別な場面ではないに違いない・・・と。

家族全員が揃っていて、いつもと変わらず夕食を囲んでいるような、そんな平和で安らかでほっとするような一コマ、そこで感じていた気持ちがいちばん自分が大切にしたい気持ちかもしれません。

選べないかも・・・とはじめは感じていたけれど、選べてよかった!(選べないと・・・なるほど、こうなるか〜・・・苦笑)。

「自分だったらどうなのだろう?」と感じてしまうのが、映画やドラマの面白さですよね。

「イカゲーム」も残酷で怖かったけれど、ついつい「自分だったらどうするの?」と考えさせられつつ、怖いゲームに参加してしまいましたもの😱

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